仮説検定とは、「ある予想(仮説)が正しいと考えてよいか」を、 データを使って判断する方法です。
世の中には「たぶんこうだろう」と考えられていることがあります。
しかし、それが本当に正しいとは限りません。
仮説検定では、実際のデータを集めて、その予想が正しいかどうかを調べます。
情報活用編プラス
第5章「データの活用」
IP04-07
標本調査と仮説検定
学習の内容
1. 仮説検定について知ろう
2. 仮説検定の手順
3. 仮説を立てる
4. 実験や調査をする
5. この結果はどれくらい珍しい?
6. 判断の基準と例題の結論
参考:両側検定と片側検定
仮説検定とは、「ある予想(仮説)が正しいと考えてよいか」を、 データを使って判断する方法です。
世の中には「たぶんこうだろう」と考えられていることがあります。
しかし、それが本当に正しいとは限りません。
仮説検定では、実際のデータを集めて、その予想が正しいかどうかを調べます。
例えば
・このコインに細工はされていないだろうか?
・このダイエット方法は本当に効果があるだろうか?
・中高生の平均睡眠時間は7時間だろうか?
今回は、この中から「コイントス」を例にして、 仮説検定の考え方を学びます。
コイントスとは、コインを上に投げて落ちたときに 「オモテ」か「ウラ」かを決める方法です。 運にまかせて結果を決めたいときによく使われます。
もし、このコインに細工がしてあったらどうでしょう。
オモテばかり出るようなコインだったら、結果は公平にならないですよね。
確かに、それならオモテがたくさん出そう。
でも、コインを何回か投げただけで、本当に細工されているか分かるのかな?
そこで使うのが仮説検定です。
データを使って、「このコインは本当に細工がされていないのか(公平なのか)」
を調べていきます。
今回調べること
このコインは本当に細工がされていないのか(公平なのか)
仮説検定は、次の流れで進めます。
仮説検定の手順
① 仮説を立てる
② 実験や調査をする
③ その結果がどれくらい珍しいかを調べる
④ 仮説をそのままにするか、見直すかを決める
仮説検定では、最初に「仮説」を立てるのか。
仮説検定では、まず「もし○○だとしたら」という前提を決めて、 その前提のもとで結果を考えます。
なるほど。その前提が「仮説」なんですね。
じゃあ、仮説はどんなものでも適当に立てればいいのかな?
仮説検定では、まず「普通はこうだろう」と考えられる仮説を立てます。
そして、その仮説のもとで今回の結果がどれくらい珍しいのかを調べるのです。
このコインについて 「細工はされておらず普通のコインである」 と考えてみます。
このときのコイントスの結果がどうなるか考えます。
では、まず考えてみましょう。
普通のコインを何回も投げたら、
オモテとウラはどのように出ると思いますか?
普通のコインなら、オモテとウラは同じくらい出ると思うけどな。
オモテが出る確率もウラが出る確率も50%だから、オモテもウラも同じだけ出ると思う。
でも、実際に投げるとオモテばかり出ることもあれば、ウラばかり出ることもあるんじゃないかな?
そうですね。コインを少ない回数だけ投げると、 たまたま偏ることはよくあります。
しかし、回数をたくさん重ねていくと、普通は オモテとウラはだいたい半分ずつになると考えられます。
そこで今回は、まず 「このコインも普通のコインと同じようにオモテとウラが同じくらい出る」 を仮説として、話を進めてみましょう。
ここでの仮説
このコインは公平である
↓
オモテとウラは半分ずつ出ると考える
まずは「普通のコインと同じ」と考えてスタートするんですね。
そうです。このように、まず 「変わったことは起きていない」 と考える仮説を立てます。
この仮説を帰無仮説(きむかせつ)といいます。
そして次に、実際にコインを投げて結果を集めて、 この仮説が正しそうかどうかを調べていきます。
帰無仮説
オモテとウラは半分ずつ出る
次に、この仮説が正しそうかどうかを調べるために、実際にコインを投げて結果を集めます。
今回は、コインを10回投げて確かめるのですね。
コイントスか!ラグビーの試合でどっちがボールを持つか決めるときでも使うやつだ。
実際に行っても良いですが、今回はすでにコイントスの実験が終わって次のような結果だったとします。
今回の実験
試行回数:10回
結果:オモテ8回、ウラ2回
10回のうち8回もオモテが出てる!オモテが多くてなんか怪しい。
普通のコインなら、オモテとウラは同じくらい出るはずだもんね。
でも、この結果だけで「このコインは普通のコインではない」と言えるのかな?
8回もオモテが出ているから細工されていると思うな。
本来は5回前後、オモテが出るはずが8回出ていますよね。
オモテが多く出ているように見えても、
たまたま偏っただけかもしれません。
そうですね。たしかにオモテが多いように見えます。
でも、「なんとなく多いから細工がある」と決めてしまうのはよくありません。
じゃあ、どうやって判断すればいいんですか?
そこで考えるのが、この結果がどれくらい珍しいのかです。
もし普通のコインなのに、今回のような結果が めったに起こらないなら、 このコインは普通ではないかもしれません。
つまり、「どれくらい起こりにくいか」を調べるんですね。
その通りです。
このように、結果がどれくらい珍しいかを 確率で計算したものを p値といいます。
p値のpはprobability:確率のことです。
そこで次は、この結果が どれくらい珍しいのか を考えていきましょう。
ここまでで、コイントスを10回行った結果、 オモテが8回、ウラが2回 でした。
では、この結果は どれくらい珍しい のでしょうか。
確かにオモテが多いけど…どれくらい珍しいのかはわからないな。
そこで考えるのが p値 です。
p値とは
帰無仮説が正しいとしたときに、 今回のような結果がどれくらい起こりにくいか を表す確率のこと。
p値を求めてみましょう!
普通のコインなら、オモテが出る確率は50%です。
今回はコイントスを10回行いました。
今回の結果は オモテが8回 でしたよね。
オモテが多い気がするけど… どれくらい珍しいのかはよくわからないです。
そこで、 今回と同じくらい極端な結果 がどれくらいの確率で起こるかを考えます。
ただし、注意をするところが2つあります。
注意点1: オモテが9回、10回出るケースもある
今回の結果はオモテが8回でした。
普通のコインでも、9回や10回オモテが出ることがあります。 これらはオモテが多すぎる結果です。
例えば8回ではなく9回オモテがでた場合はどうでしょうか?
8回出るより多いので、もっと細工がしている可能性がありそう。
そうですよね。今回は8回だけではなく8回以上出る確率を計算しなければいけません。
注意点2: オモテが0回、1回、2回の場合もある
反対に、オモテが2回・1回・0回のように、 少なすぎる場合もあります。
逆に、オモテが0回、1回、2回のように少ない場合はどうですか?
そうですね。同じようにオモテがほとんどでない場合も細工がして有りそうです。
そうですよね。この場合は、オモテが2回以下になる確率を考える必要があります。
つまり今回のp値では 0回、1回、2回、8回、9回、10回 の範囲を考えます。
p値に含める結果
オモテが多すぎる → 8回、9回、10回
オモテが少なすぎる → 2回、1回、0回
なるほど…。多すぎる場合だけじゃなくて、 少なすぎる場合も考えないといけないんですね。
その通りです。今回のように、多すぎる場合と少なすぎる場合の両方 をまとめて考えます。
そして、それらがどれくらいの確率で起こるかを計算して求め、その確率から p値を求めます。
確率を計算するんですか⋯。ちょっと大変そう。
ちゃんと計算式がありますが、ここでは、計算済みの値を使ってp値を求めていくので心配しなくても大丈夫ですよ。
| オモテの回数 | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 確率 | 0.1% | 1.0% | 4.4% | 11.7% | 20.5% | 24.6% | 20.5% | 11.7% | 4.4% | 1.0% | 0.1% |
| p値に入れる? | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
○がついているところの確率を全部足すんですね。
p値の計算
オモテ10回 → 0.1%
オモテ9回 → 1.0%
オモテ8回 → 4.4%
オモテ2回 → 4.4%
オモテ1回 → 1.0%
オモテ0回 → 0.1%
合計 p値 ≒ 11.0%(約10.9%)
つまり、この結果は 約11%くらいの確率で起こるということですね。
でも…11%って珍しいんですか?
この結果だけで、このコインが普通じゃないって言えるんでしょうか?
良い質問ですね。
仮説検定では、 どれくらい小さい確率なら「珍しい」と判断するか の基準を決めておきます。
この基準を 有意水準 といいます。
次は、このp値を 有意水準と比べて判断 してみましょう。
p値が求まっただけでは、まだ結論は出せません。
その結果が 本当に珍しいのかどうか を判断するための基準が必要です。
有意水準
よく使われる基準:5%(0.05)
この範囲は 偶然では起こりにくい結果 と考える
つまり、100回中5回くらいしか起こらない結果なら 「偶然ではないかもしれない」と考えるんですね。
でも、どうして5%なんですか?
実は、5%という数字は 絶対に決まっているわけではありません。
研究では 1%や 10% を使うこともあります。
その中でも5%は 厳しすぎず、ゆるすぎない 基準としてよく使われています。
結果の起こりやすさを図で表すと、 真ん中ほど起こりやすく、端ほど珍しい 形になります。
赤い部分が、有意水準なんですね。
そうです。 この赤い部分は 偶然では起こりにくい結果 を表しています。
今回のコイントスの結果はどうなんですか?
今回計算した p値 は 約11% でした。
これは有意水準 5% より大きいですね。
ということは、 有意水準の範囲には入っていないんですね。
その通りです。
今回の結果は 偶然でも起こる可能性がある と考えられます。
今回の結論
今回の結果だけでは
「このコインは公平ではない」 とは言えない
したがって
「このコインは公平である」 という仮説は棄却されない(間違いとは言い切れない)
なるほど…。
「結果が怪しいかどうか」は、 なんとなくじゃなくて、確率で判断する んですね。
そして、その確率が どれくらい小さいか を見て判断するんだね。
今回は11%だから、「珍しいとは言えない」ってことか。
その通りです。
仮説検定では、
・結果がどれくらい起こりにくいか(p値)を求める
・基準(有意水準)と比べる
この2つで、仮説が正しそうかどうかを判断します。
そして今回のように、 多すぎる場合と少なすぎる場合の両方 を考えたことも大事なポイントでしたね。
今回は、オモテが多すぎる場合だけでなく、オモテが少なすぎる場合も珍しい結果として考えました。
このように、 大きすぎる場合と小さすぎる場合の両方 を調べる方法を 両側検定 といいます。
今回の検定
両側検定
「オモテが多すぎる」ときも「オモテが少なすぎる」ときも調べる
今回は、オモテが8回だけでなく、オモテが2回のような反対側の結果も考えましたね。
その通りです。
「普通と違うか」を広く調べたいときは、両側検定を使います。
一方で、 どちらか片方だけ を調べる方法もあります。
例えば、 「オモテが多すぎるか」だけを調べたい なら、オモテが8回・9回・10回だけを見ます。
このような方法を 片側検定 といいます。
片側検定の例
「オモテが多すぎるか」だけを調べる
→ オモテが8回、9回、10回だけを見る
→ 片側でも 5% がよく使われる
同じ5%でも、両側検定と片側検定だと範囲が変わるのか。
調べたいことによって、両側を見るか、片側だけを見るかが変わるんですね。
そうです。
今回は「普通のコインと違うか」を調べたので、
両側検定
を使いました。
まとめ
両側検定:大きすぎる場合と小さすぎる場合の両方を見る
片側検定:どちらか片方だけを見る
有意水準が5%の場合、 両側検定では両端それぞれ2.5%、 片側検定では片側に5%の範囲を基準とします。